中原中也・夜の詩コレクション100/月下の告白 青山二郎に
月下の告白 青山二郎に
劃然(かくぜん)とした石の稜(りょう)
あばた面(づら)なる墓の石
虫鳴く秋の此(こ)の夜(よ)さ一と夜
月の光に明るい墓場に
エジプト遺蹟(いせき)もなんのその
いとちんまりと落居(おちい)てござる
この僕は、生きながらえて
此の先何を為すべきか
石に腰掛け考えたれど
とんと分らぬ、考えともない
足の許(もと)なる小石や砂の
月の光に一つ一つ
手にとるようにみゆるをみれば
さてもなつかしいたわししたし
さてもなつかしいたわししたし
(一九三四・一〇・二〇)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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