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2020年7月13日 (月)

中原中也・夜の詩コレクション100/月下の告白 青山二郎に

月下の告白 青山二郎に

 

劃然(かくぜん)とした石の稜(りょう)

あばた面(づら)なる墓の石

虫鳴く秋の此(こ)の夜(よ)さ一と夜

月の光に明るい墓場に

エジプト遺蹟(いせき)もなんのその

いとちんまりと落居(おちい)てござる

この僕は、生きながらえて

此の先何を為すべきか

石に腰掛け考えたれど

とんと分らぬ、考えともない

足の許(もと)なる小石や砂の

月の光に一つ一つ

手にとるようにみゆるをみれば

さてもなつかしいたわししたし

さてもなつかしいたわししたし

 

               (一九三四・一〇・二〇)

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

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