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« 中原中也・夜の詩コレクション117/雨が降るぞえ――病棟挽歌 | トップページ | 思い出シネマ(1992~2002)一挙掲載 »

2020年8月 1日 (土)

中原中也・夜の詩コレクション118/秋の夜に、湯に浸り

秋の夜に、湯に浸り

 

秋の夜に、独りで湯に這入(はい)ることは、

 淋しいじゃないか。

 

秋の夜に、人と湯に這入ることも亦、

 淋しいじゃないか。

 

話の駒が合ったりすれば、

その時は楽しくもあろう

 

然(しか)しそれというも、何か大事なことを

 わきへ置いといてのことのようには思われないか?

 

――秋の夜に湯に這入るには……

独りですべきか、人とすべきか?

 

所詮(しょせん)は何も、

 決ることではあるまいぞ。

 

さればいっそ、潜(もぐ)って死にやれ!

それとも汝、熱中事を持て!

 

※   

  ※

 

四行詩

 

おまえはもう静かな部屋に帰るがよい。

 煥発(かんぱつ)する都会の夜々の燈火(ともしび)を後(あと)に、

おまえはもう、郊外の道を辿(たど)るがよい。

そして心の呟(つぶや)きを、ゆっくりと聴くがよい。

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

 

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