中原中也・夜の詩コレクション101/野卑時代
野卑時代
星は綺麗(きれい)と、誰でも云(い)うが、
それは大概、ウソでしょう
星を見る時、人はガッカリ
自分の卑少(ひしょう)を、思い出すのだ
星を見る時、愉快な人は
今時減多に、いるものでなく
星を見る時、愉快な人は
今時、孤独であるかもしれぬ
それよ、混迷、卑怯(ひきょう)に野卑(やひ)に
人々多忙のせいにてあれば
文明開化と人云うけれど
野蛮開発と僕は呼びます
勿論(もちろん)、これも一つの過程
何が出てくるかはしれないが
星を見る時、しかめつらして
僕も此の頃、生きてるのです
(一九三四・一一・二九)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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