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2020年7月 3日 (金)

中原中也・夜の詩コレクション90/Qu’est-ce que c’est?

Qu’est-ce que c’est?

 

蛙が鳴くことも、

月が空を泳ぐことも、

僕がこうして何時(いつ)まで立っていることも、

黒々と森が彼方(かなた)にあることも、

これはみんな暗がりでとある時出っくわす、

見知越(みしりご)しであるような初見であるような、

あの歯の抜けた妖婆(ようば)のように、

それはのっぴきならぬことでまた

逃れようと思えば何時(いつ)でも逃れていられる

そういうふうなことなんだ、ああそうだと思って、

坐臥常住(ざがじょうじゅう)の常識観に、

僕はすばらしい籐椅子(とういす)にでも倚(よ)っかかるように倚っかかり、

とにかくまず羞恥(しゅうち)の感を押鎮(おしし)ずめ、

ともかくも和やかに誰彼(だれかれ)のへだてなくお辞儀を致すことを覚え、

なに、平和にはやっているが、

蛙の声を聞く時は、

何かを僕はおもい出す。何か、何かを、

おもいだす。

 

Qu’est-ce que c’est?

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

 

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