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2020年7月31日 (金)

中原中也・夜の詩コレクション117/雨が降るぞえ――病棟挽歌

雨が降るぞえ

   ――病棟挽歌

 

雨が、降るぞえ、雨が、降る。

今宵は、雨が、降るぞえ、な。

俺はこうして、病院に、

しがねえ、暮しをしては、いる。

 

雨が、降るぞえ、雨が、降る。

今宵は、雨が、降るぞえ、な。

たんたら、らららら、らららら、ら、

今宵は、雨が、降るぞえ、な。

 

人の、声さえ、もうしない、

まっくらくらの、冬の、宵。

隣りの、牛も、もう寝たか、

ちっとも、藁(わら)のさ、音もせぬ。

 

と、何号かの病室で、

硝子戸(ガラスど)、開ける、音が、する。

空気を、換えると、いうじゃんか、

それとも、庭でも、見るじゃんか。

 

いや、そんなこと、分るけえ。

いずれ、侘(わび)しい、患者の、こと、

ただ、気まぐれと、いわば気まぐれ、

庭でも、見ると、いわばいうまで。

 

たんたら、らららら、雨が、降る。

たんたら、らららら、雨が、降る。

牛も、寝たよな、病院の、宵、

たんたら、らららら、雨が、降る。

 

(了)

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

 

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