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2020年8月16日 (日)

Z―古代ギリシア語で「彼は死なない」という意味をもつ

Z
1969年
フランス=アルジェリア

コスタ・ガブラス監督、バシリ・バシリコス原作、ミキス・テオドラキス音楽。イブ・モンタン、イレーネ・パパス、ジャン=ルイ・トランティニャアン、ジャック・ペラン

軍政下のギリシアを1974年、ぼくは旅した。軍事クーデターがどのように起こったか。その前段階の左翼政治家暗殺事件が、軍部および王室および警察権力および司法権力および「地中海的右翼」(テオ・アンゲロプロスの言葉)らのからまる巨大な権力機構によって仕組まれことを暴く判事らの活動が勝利し、勝利する過程で盛り上がる平和主義運動がクーデターにより圧殺された事実を、ガブラスは亡命先のフランスで撮らねばならなかった。ぼくが旅したのはクーデター後5年ほど経ったギリシアであった。

ニコス・カザンザキスの墓は、クレタ島イラクリオンの小さな広場の片隅に追いやられ、粗末な丸太2本の十字架だったし、メリナ・メリクーリらも亡命的生活を余儀なくされていた。エンディングのナレーションが、軍政が禁じたものを列挙する。長髪、ミニスカート、ソフォクレス、トルストイ、ソ連に乾杯、ストライキ、アリストファネス、イオネスコ、サルトル、アルビー、ピンター、新聞の自由、社会学、ベケット、ドストエフスキー、現代音楽、ポピュラー音楽、現代数学、そして「Z」。その意味は、古代ギリシア語で「彼は死なない」--と。「彼」は暗殺された代議士を指しているが、彼を支持する無数の反体制・反軍政の市民の心をも指しているのは言うまでもない。
(2000.3.26記)

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