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2020年9月 2日 (水)

アントニオーニ的な絶望感というより、誤解を恐れずに言って、一種、爽快感があるのである。

パリ、テキサス
1984年
ドイツ

監督:ヴィム・ヴェンダース、製作:クリス・ジーヴァニッヒ、アナトール・ドーマン、脚本:サム・シェパード、撮影:ロビー・ミューラー、音楽:ライ・クーダー。
キャスト:ハリー・ディーン・スタントン、ディーン・ストックウェル、ナスターシャ・キンスキー、ハンダー・カーソン。

「この店だと、あなたの声が聞こえる。どの男もあなたの声なの」

「パリ、テキサス」(ヴィム・ベンダーズ監督)で、ようやく探しあてた妻ハンターとのぞき部屋のマジック・ミラー越しに話すトラヴィスの会話の、妻の言葉である。

この映画を見ながら思い出していたのは、ミケランジェロ・アントニオーニの「愛の不毛3部作」である。相当、ピントが外れているかもしれないが、アントニオーニが提起し得なかった愛の可能性のひとつの答を、ベンダーズはここで果したのではないか、という思いだった。

トラヴィスは、結局、去る。ついに見つけた妻の元を去る。だから、これは男と女の深い断絶の物語であって、愛の可能というよりも不可能性を、アントニオーニよりもより一層、掘り進めたのだ、という読み方もある。しかし、アントニオーニ的な絶望感というより、誤解を恐れずに言って、一種、爽快感がこの映画にはあるのである。これは、断絶をドライな眼差しでとらえた、というだけのものでもない。

1984年カンヌ国際映画祭グランプリ。
(2003.3.15)

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