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2020年9月11日 (金)

その2 フラガーノの留守中に、初めて会った二人は、すでに肉体のつながりを持っていたが、ここでさらに結ばれるのである。その仕掛けが、夜に鳴く猫であり、それは求愛する動物の声である。

郵便配達は二度ベルを鳴らす
1942
イタリア

ルキノ・ヴィスコンティ監督、ジェームズ・M・ケイン原作、ジュゼッペ・ロサーティ音楽。クララ・カラマイ、マッシモ・ジロッティ、ジュアン・デ・ランダ

ルキノ・ヴィスコンティ「郵便配達は二度ベルを鳴らす」は1942年の映画だ。半世紀以上前の作品が、輝いている。色褪(あ)せない。これまで何度見たか、これで最低3回は見た記憶がある。映画、ことさら名作は、いつ見ても、なんらかの発見があるものだが、今回(昨日)見て2ヵ所、それがあった。

ジョバンナの憂悶を表わす猫のシーン。

冒頭部、ジーノ、ジョバンナ、フラガーノが、初めて3人そろうシーンで、ジョバンナは、戸外でやかましくわめきたてている猫の夜鳴きをどうにかして欲しいと、夫フラガーノに懇願する。フラガーノは、ジョバンナの心を理解せぬまま、銃を取り出し、夜鳴き猫を射殺してしまう。このシーンで、フラガーノが銃を取り出し、戸外に出た直後、ジーノは、ジョバンナのところに、すっと歩み寄り、肩を抱きしめて、労(いた)わる。ドン、という銃声を聴くジョバンナとジーノは、心でも結ばれる。ジーノは、ジョバンナの憂悶を理解する。「触られるのも嫌や」というほどに、夫のがさつさを嫌悪する女の気持ちを、ジーノは確認する。フラガーノの留守中に、初めて会った二人は、すでに肉体のつながりを持っていたが、ここでさらに結ばれるのである。

その仕掛けが、夜に鳴く猫であり、それは求愛する動物の声である。ジョバンナの憂悶が、この猫の鳴き声にかぶさった、シンボリックな表現になっているのだ。

もう一つのシーン。フラガーノを殺害してしまったジーノとジョバンナが、同じ屋根の下で暮らし始めた日の終りに、ジョバンナが一人、片づけの済んでいないフロアで、食事するシーン。

ジーノは、すでに「こんなはずではなかった」という悔いを、ジョバンナとの定住生活に感じている。二人は、口論したばかりだ。客のひけた、祭りの後の店。食い散らかし、飲み残されたテーブルの端の椅子に腰掛け、シチューをほうばるジョバンナは、疲れにまかせて、眠り込んでしまう。夢の暮らしを手に入れて、健気に働いた1日の終りに、伴侶であるジーノからの反発を受けたジョバンナは、何を思うか。不安を、包み込むように眠りが襲うのである。ジーノとの暮らしに、すでに翳りが見えたことを表わすシーンである。

この2シーンだけで、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の、ジーノとジョバンナの関係の流れが表現されている。
(2002.2.24)

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