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2020年10月14日 (水)

「阿Q」(魯迅)のその後、阿Qの甦りとしての「ボンクラの秦」を、この作品に感じないわけにはいかない。

芙蓉鎮
中国
1987年

監督:謝晋( シェ・チン)、原作:古華 、脚色:阿城(アー・チョン)・ 謝晋( シェ・チン)、撮影:慮俊福、作曲:葛炎、美術:金綺芬、編集:周鼎文( チョウ・ティンウェン)録音:朱偉剛 、

キャスト:劉暁慶(リュウ・シャオチン)=胡玉音(フー・ユイイン)、 姜文(チァン・ウェン)=秦書田(チン・シユーティエン)   鄭在石(チョン・ツァイシー)=谷燕山(クー・イェンシャン)、徐松子(シュー・ソンツー)=李国香(リー・クォシャン)、祝士彬(チュー・シーピン)=王秋赦(ワン・チウシャー)、張光北(チャン・クァンペイ)=黎満庚(リー・マンコン)、劉年利(リュウ・リーニェン)=黎桂桂(リー・クイクイ)

日本語字幕:白井啓介

「芙蓉鎮」は、第三世代の監督と呼ばれる謝晋( シェ・チン)、1987年の作品。文化大革命=文革(ぶんかく)を真っ向から批判している。

1963年、1966年、1979年という三つの時間を切り取って、文革批判に正面から切り込んだ。1963年は文革が始まった初期、66年は紅衛兵全盛の時代、79年は文革終息宣言後である。狂気がはびこったとも、悪魔が蹂躙したともいえる激動の時代を、湖南省・芙蓉鎮という名の、地方のある村を舞台に描いている。

検閲をくぐり抜けての作品であることは、他の中国の映画作品と同様だが、改革・開放政策を背景に、文革という過去への怒りや悲しみばかりではなく、現代中国へつながる負の部分への批判も随所に見られる作品になっている。

いわば、民衆史・庶民史の視点が全編を通じて流れ、中心に胡玉音(フー・ユイイン)と秦書田(チン・シューティエン)の愛の物語(と呼ぶには、悲惨極まるが)を置きながらも、谷燕山(クー・イェンシャン)、李国香(リー・クォシャン)、王秋赦(ワン・チウシャー)、黎桂桂(リー・クイクイ)、黎満庚(リー・マンコン)ら、周辺人物の行動ぶり・人間的営為のそれぞれにも看過ない眼差しを向け、扱っている時間は16年だが、大河ドラマと呼ぶに相応しい構造を持つ。

特筆すべきは、「ボンクラの秦(チン)」とレッテルを貼られた秦書田(チン・シューティエン)への眼差し。秦は、1957年には民話を収集し、歌曲や舞曲を作る芸術家・知識人といってよい存在だったが、映画がはじまる1963年にすでに労働改造の刑に服し、村の看板書きとして下放している。ニセの革命と知りながらレッテルに甘んじ、ボンクラであることを一身に引き受けている、実は、覚醒した人物であるという一点だ。

紅衛兵の時代、秦は、村の石畳の清掃役(えき)に従事させられているが、この時に出会った玉音との愛を育んで子どもをもうけた罪で10年間の獄入りを命ぜられる。服役後、玉音と再会がかない、没収されていた玉音の米豆腐の店が再び繁盛する3年後には、党中央(県)からの復権通達(文化館長への就任)がもたらされるのだが、秦はこれを拒否するのである。玉音との時間を一刻でも長く共有していたい秦は、ほうきを持って石畳を清掃する仕事が、歌曲・舞曲の保存・創作の仕事になんら劣るものではないことを訴えたのであった。

「阿Q」(魯迅)のその後、阿Qの甦りとしての「ボンクラの秦」を、この作品に感じないわけにはいかない。
(2004.3.21)

【「芙蓉鎮」受賞歴】
1988年 カルロビ・ヴァリ映画祭グランプリ
1989年 モンペリエ映画祭金パンダ賞
1987年 百花賞最優秀作品賞
           最優秀主演女優賞(劉暁慶)
           最優秀主演男優賞(姜文)
           最優秀助演男優賞(祝士彬)
1987年 金鶏賞最優秀作品賞
           最優秀主演女優賞
           最優秀助演女優賞(徐松子)
           最優秀美術賞

 

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