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2020年10月16日 (金)

野蛮と紙一重で絡み合っている土俗的エネルギーの側に立ち、皇軍への復讐を命令する造り酒屋のおかみさんの思想が美しい

紅いコーリャン
1987
中国

張芸謀(チャン・イーモウ)監督、莫言(モー・イェン)原作・脚本。
鞏俐(コン・リー)、瞭汝駿(トン・ルーチュン)、姜文(チャン・ウェン)

1920年代、中国・山東省での物語。数奇な運命をたどり、コーリャン酒造りに命をかけた曽祖父母の生涯を、孫の語り手が語る。

日本軍の残虐さ、野蛮さが、たどたどしい日本語(あれを演じているのは、日本人俳優ではない)であるゆえに、深度を深めている。奇怪(きっかい)な民族がいるものだなあ、と思う。外国人がイメージする日本人には、いつも、滑稽といえるほどの奇怪さがつきまとっているが、そう見えるのは事実なのであろう、と推測するとき、背すじが寒くなるようなリアリティさえ感じる。「ぼくも、あのように見られている」と言ってしまえば、「あんたは、ああではない」と心ある外国人は同情してくれるかもしれないが、それは、うわべのことだ、きっと。

コンリー演じるチュアルの美しさは、コンリーが美しい女優であるということだけを指すのではない。野蛮と紙一重で絡み合っている土俗的エネルギーの側に立ち、皇軍への復讐を命令する造り酒屋のおかみさんの思想が美しいのだ。思想とはこの場合、自らが生まれ育ってきた紅いコーリャンの平原、そのコーリャンを原料にして酒造りに精を出す人々の汗、その汗によって長い間支えられてきた土地の経済や文化への愛である。変革されなければならない文化や経済を、その内側に立ち、愛しながら、守り続けようとする意志であり、理性のことだ。その美しさが、一瞬にして、皇軍によって踏みにじられる。

悪病もちの主人・李大頭は何者か(語り手は、下手人を祖父と想定する)に殺され、旧時代は終焉するかに見えた。羅漢(ルーハン)や夫ユイらと力を合わせて、新しい酒・十八里紅=シーパーリーホアンの製造に成功し、息子も誕生して、村に平和で活気のある生活が訪れた矢先、日本軍が村を襲う。チュアルは、息子の前で銃弾に倒れ、盗賊・三炮(サンポウ)は、生きたまま皮はぎにされる。脅迫されて手を下すのは、村の肉職人だった。画面いっぱいに血しぶきがあがる。その色が、民衆の命そのものであるコーリャン酒の紅にかぶさる。
(2000.10.29鑑賞&記)

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