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2021年6月22日 (火)

再掲載/2012年10月21日 (日) 「一つのメルヘン」の不可能な風景・生きているうちに読んでおきたい名作たち

叙景ではじまり
起承転結の転が際立つ詩ということで
前に「春の日の夕暮」を読みましたが
これと似た構造をもつ詩がいくつもあります。

すぐさま浮かぶのが
「一つのメルヘン」です。

一つのメルヘン
 
秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射しているのでありました。

陽といっても、まるで硅石(けいせき)か何かのようで、
非常な個体の粉末のようで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもいるのでした。

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでいてくっきりとした
影を落としているのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもいなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れているのでありました……

(※新字・新かな表記にしてあります。編者。)

( )で示したルビは
角川版全集編集委員会によるもので
詩人は1か所もこの詩にルビを振っていません。
それほど平易な語句を使って作られた詩です。

秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、
小石ばかりの、河原があって、
――という詩のはじまりや

第3連の
さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
――という「転」という構造が
よく読むと「春の日の夕暮」と似ているというだけの理由で
この詩をビギナーの目でじっくりと読んでみます。

というわけで、
まずはこの詩を通しで読んだあとに
辞書を引くとすれば
ルビのある「彼方」と「硅石」くらいでしょうか。
この2語は、ルビがあり読み方が分かるのですから
辞書を使うのは意味を調べるためだけのことですね。

「彼方」は、あっちの方、遠くの方向。
「硅石」は、珪素が化合してできた鉱物。結晶したものが水晶や石英などですから、この詩では水晶みたいなものと考えれば分かりやすいでしょう。

「非常な個体の粉末」がややむずかしく感じられますが
個体は固体と混同されているなどと考えるよりも
「非常な個体の粉末」をひとかたまりの語句として感じ取ったほうが無難でしょう。

平易な言葉使いのうえに
ありました
のでした
――の「ですます調」がやさしい響きを伝えますし、
4行―4行―3行―3行のソネットが
定型であることによる格調感を生み出します。

さらさらとというオノマトペ(擬音語・擬態語)とそのルフラン(英語ではリフレーン)が
心地よく耳をくすぐります。
音感を直撃する詩であることは
一度で体が覚えちゃうほどの親しみを持たせます。

(つづく)

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