詩のこころ2023
恍惚の鵯 ヒヨドリin ecstacy
1
冬のアテネの街で
粗末な衣服に身を包んだ哲人が
日向ぼっこを楽しんでいた
その頃
東京郊外のとある病院の柿の巨木に
鵯ヒヨドリの小群れが集合した
ヒヨドリたちは
いつになく興奮しているのが
自動車の激しく行き来する道から
見て取れた
鈴なりの柿の実の枝から枝へ
忙しなくヒヨドリたちは渡り
時折、虚空へ飛び立った
枝を渡ったヒヨドリは
新しく手に入れた熟柿に嘴を埋めて
しばらく静止したかと思う間もなく
また他の枝に飛び移る
蕩ける甘味に身を任せて
無防備で自由気ままな格好を晒し
逆立ちして枝にぶら下がり
一心に実をしゃぶっては
歓喜の絶叫を放っている
ヒヨドリたちのその時の顔を
誰が見ただろうか?
その表情こそ
恍惚というものに違いないが
高い木の上であり
じっくり見ることはできない
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